なぜ、ドラムの音作りには決まった正解がないのか?
「ジャンルや素材によって違うので、正解はありません」――ドラムのミックスについて調べていると、必ずと言っていいほどこの言葉に出会います。
もちろん、間違ってはいません。アコースティックなジャズと、バキバキにエディットされたモダンメタルでは、求められる音は違います。キックの低域をどこまで残すのか。スネアのアタックをどこまで強調するのか。楽曲のスタイルや素材によって変わる部分があるのは当然です。
ただ、その前提が少し極端に捉えられているようにも感じます。
「ドラムの音作りは毎回ゼロからフルカスタムで作り込むもの」という空気が強くなりすぎて、ジャンルや素材によらない、普遍的な部分がすっかり置き去りにされている気がしてなりません。
そこまで毎回悩まなくても、もっと一貫した基準を持っていいはずだ。僕はずっと、そう思っていました。
ギターアンプは、挿すギターによって設計が変わるわけではない
たとえば、エレキギターの音作りを考えてみてください。
ストラトキャスターを挿したからといって、アンプ内部の周波数特性がストラト専用に変化するわけではありません。レスポールを挿したからといって、内部回路が自動的にレスポール仕様へ組み替わるわけでもありません。
もちろん、GAIN や BASS、MIDDLE、TREBLE といったツマミは都度調整します。でも、基本となるアンプのキャラクターはそのままです。周波数ポイントが変わることも、コンプレッションの具合が変わることもありません。それでも成立する。ギターの音作りでは、これがごく普通です。
それなのに、なぜドラムになると急に、毎回ゼロベースでEQやコンプの設定をパッチワークのように悩まされることになるのでしょうか。
固定化していい部分と、可変式にすべき部分を分ける
ドラムとギターが別の楽器であることは、もちろん承知しています。それでも、音作りの考え方には共通して使える部分があるはずです。
キックには、キックを成立させるための大まかな処理の方向性がある。スネアには、スネアを成立させるための大まかな方向性がある。タムにも、シンバルにも、ルームにもある。そして、その「大枠」はシチュエーションが変わったからといって、すべてひっくり返るほど違うものではない。僕はそう考えています。
むしろ重要なのは、常に固定してしまっていい部分と、ケースバイケースで変えるべき部分を分けることではないでしょうか。
プロのミックスでも、完全な白紙から処理を考えているわけではありません。お気に入りのコンプレッサーがあったり、よく使うEQポイントがあったり、いつもの処理順があったり。まず自分の中にある定番の型に素材を通してみて、そこから必要な部分だけ動かす。そういうやり方は、ごく自然なものだと思います。
だったら、その「型」そのものをプラグインにしてしまえばいい。そう考えて作り始めたのが、ドラム専用プラグイン「DRUMHEAD」です。挿すだけで音が決まる、ギターアンプ感覚のドラム音作りツール。 コンセプトは、これだけです。
そのために DRUMHEAD は、ドラムの音作りを3つの役割に分けました。こちらで固定してしまう部分。素材に合わせて自動で揃える部分。そして、あなたが決める部分です。
基本処理は固定
音を整えるための基本処理は、あらかじめこちらで固定化しています。キックならキック。スネアならスネア。それぞれのトラックに対して適した、フィルター/コンプレッサー/EQなどの処理チェーンをあらかじめ組んであります。
言ってしまえば、「この辺はだいたいこう処理しておけば大丈夫」という部分です。ここをユーザーが設計し直す必要はありません。
素材に合わせたキャリブレーション
一方で、素材によって明らかに変わるものもあります。その代表が入力レベルです。
まったく同じコンプレッサー設定でも、入力されるスネアの音量が10dB違えば、リダクション量は大きく変わります。これでは「基本処理を固定する」という考え方が成立しません。
そこで DRUMHEAD では、「LEARN」ボタンで入力信号を検出し、内部の処理が想定した範囲で掛かるようにレベルを自動で揃えます。素材が大きくても小さくても、掛かりすぎたり、ほとんど掛からなかったりすることがなく、常に一定のリダクション量を維持します。
必要最小限の操作子で、キャラクターを調整できる
箱鳴りをもう少し抑えたい。アタックを強くしたい。パンチを足したい。高域を前に出したい。もっと温かい音にしたい。
こうした「どういうキャラクターにしたいか」は、機械には決められません。だから、ここだけをノブやスイッチとして残しました。
整理整頓は固定する。素材による入力差は自動で揃える。キャラクターだけ、あなたが決める。 DRUMHEAD の役割分担は、この3つです。
使い方はたったこれだけです
- 1トラックに挿して、キックやスネアなどのパートを選ぶ

- 2「LEARN」を押して、代表的なヒットを鳴らす

- 3入力レベルが自動で揃い、処理が想定どおり掛かる状態になったことを確認する

- 4あとは数個のノブで、自分の好みに合わせて調整する

ドラムの音作りにおいて、すべてをゼロから考える必要はない。細部に迷い続けるのではなく、まずは大きな方向性を決めてしまう。そして、本当に音楽的な判断が必要な部分だけ、自分の耳で決める。
ギターの音作りが「とりあえずこのアンプに挿して、GAINとTONEを触ってみよう」から始められるように、ドラムの音作りだってもっとラフに考えていい。
DRUMHEAD は、そんな新しいワークフローの提案です。

